変幻自在・組み合わせ無数
またまた探偵ガリレオシリーズを購入した。
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/03/10
- メディア: 文庫
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ガリレオシリーズ第1作の、(いま振り返ると)シンプルな理科系推理、・・みたいなスタイルからどんどん変化して、変幻自在、組み合わせ多彩、ひっくり返しパターン無数、という感じ。
「赤外線カメラを使った透視術」(モモンガの夜行性というヒントあり)
「電磁波照射」を使った幻聴
「強アルカリ薬剤」による車の傷
「テレパシー」と思わせて追い込む手法
殺人現場の偽造のウソを優しく救う湯川
劇団ファンで、劇団員の不可思議な行動を解きあかす湯川
・・パターン無数だから、どう展開されるか、できるだけ注意深く読もうとするが、毎回「うわっ、そう来るか!」の展開だった。
スタイルをここまで柔軟に崩しながら、「湯川准教授の正義観、観察力、誠実さ、科学知識の豊富さ」は必ず生かされる、という安心感、読み応え感。
圧倒的な満足感、説得力。
シリーズが更新されるたびに、面白さが「維持」されるのではなく、「上昇」するという力強さ。
・・いや、ホントに、大変なことだ。
「真面目は報われる」希望
書店の店頭で見かけ、「80年にわたる寿命研究」というサブタイトルにひかれて、購入した。
真面目な人は長生きする 八十年にわたる寿命研究が解き明かす驚愕の真実 (幻冬舎新書)
- 作者: 岡田尊司
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2014/09/27
- メディア: 新書
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80年に渡る研究とは・・、
アメリカの心理学者ルイス・ターマンさんが1920年頃に始めた1500人の子どもの能力、環境を調べて追跡調査する研究(-1956年まで)
この研究を1985年頃から引き継いだ、ハワード・フリーマンとレスリー・マーチンの追跡調査。(現在も続く)
確かに、1500人を対象に、80年以上追跡するという、ほかには例のあまりなさそうな研究だ。
岡田さんによると、この研究の結果は・・
長寿と最も関係のある性格傾向は「明るさ」や「社交性」ではなく、「慎重さ」「勤勉さ」「誠実さ」といった地味な特性だった。
生真面目で、怠りなく、自己コントロールができ、信頼に足る、慎重な努力家の傾向だった。
長期にわたって有利な特性とは、慎重で勤勉な努力家、ひと言で言えば、真面目であるということ。
岡田さんは巻末に、この研究結果を多くの人に知ってもらいたいと思った理由としてこう書いている。
真面目に生きることは、十分報われる努力だと再認識することに意味があると思ったからだ。
この結論は、希望ある真実だと思いたい。
自分は本当に真面目といえるかどうかという問題はあるが、誰もが、多かれ少なかれ、自分の中の「真面目な部分」を意識していると思う。
こうした追跡調査の結果を聞けば、多くの人が、その真面目なところって、やっぱり大切だなと、思い直す気になるし、岡田さんが言う通り、希望を感じて、嬉しくもなる。
本の全体は、研究結果に加え、破局的思考や、結婚・離婚と寿命の関係、長寿科学、社会との絆の話、ストレス、トラウマなど、岡田さんの専門分野を含めて多岐に渡る。このあたりの話は、気にはなるが、「真面目人間、長寿説」ほどの衝撃ではないかな。
一方で、いくら80年を超える追跡調査といっても、いまと時代が激変しているわけだから、一概に受け入れられないのでは?という指摘も紹介されている。
確かに、その通りではある。あくまで参考結果だ。
まあ「真面目な人は絶対に早く死ぬことはない」と言っているわけではなく、追跡調査の結果、見えてきた「傾向」の話だから、当然、限界もある、と思い直したりもした。
・・ただ、全体を振り返ると、やっぱり嬉しいかな。
80年以上かけて1500人を追跡調査したら、真面目な人が長生きだったって!
・・この話は、何度聞いても嬉しいな。
「推理は面倒」の素晴らしさ
週刊文春で推薦されていたので購入した。
- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/12/06
- メディア: Kindle版
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作者・麻耶雄嵩(まや・ゆたか)さんの舞台設定がムチャクチャなのが、素晴らしい。
「やんごとない身分」で「あまりに暇なので道楽で探偵をやっている」という、通称・貴族探偵さんの短編5本。
警察幹部にも顔が利き、捜査に加わるが、実際に調べるのは、貴族探偵を支える「家人」「メイド」「運転手」「使用人」さんたち。みなさん、すごく優秀。
捜査中、貴族探偵は紅茶を飲んだり、女性とおしゃべりしているだけ。
毎回、まわりに、最後は推理するのかなーと思わせて、「あなたが推理するんじゃないの?」と聞かれると、「まさか、どうして、そんな面倒なことを」と話して、推理まで使用人のみなさんにまかせてしまう。ムチャクチャくだらなくて、素晴らしいパターンだ。
ただ、管理者としては、とても優秀なわけで、これで解決しているのだから、別にこれで何も問題ないよなー、と真面目に思ったりもした。いや、そこまで考える話ではないかもしれないが、「部下に完全にまかす」って、それはそれでカッコいいし、能力も、勇気もいることだし。
まあ、この場合は、小説の楽しさとして、このパターンを楽しめばいいだけだと思うが。
3本目の「こうもり」だけは、いわゆる「わざとミスリード型」の話なので、途中で「あれっ?」と思って、最後のひっくり返しに、今一歩、ノレなかった。ここは好き嫌い、分かれそう。
それ以外は、バカバカしさと、謎の解き明かしの面白さで、十分楽しむことができた。
こういう設定のくだらなさで引っ張る面白さってあるんだな。
まだまだ、自分の知らない、いろいろな面白さのパターンがあると知ることは、とても嬉しいし、それだけで楽しくなる。
かわいらしさ・工夫・愛
グラサン師匠のマンガ「鉄板競馬」のスペシャル版。新書サイズも1回買ったが、今回スペシャル版ということで購入した。
鉄板競馬・10周年記念12馬券福神SP (競馬王馬券攻略本シリーズ)
- 作者: グラサン師匠
- 出版社/メーカー: ガイドワークス
- 発売日: 2016/08/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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改めて、このグラサン師匠という方、すごいと思う。
形としては、雑誌「競馬王」などの執筆者、馬券の達人的な人を訪ねて、馬券必勝法について話を聞く、というスタイル。
面白い。ものすごく面白い。それは・・
絵が、ものすごく、かわいい。
マンガの話の入り、流れ、盛り上げ、オチが、ムチャクチャ面白い。
グラサン師匠の達人たちへの愛、リスペクトが見える。
・・からだと思う。とてもいい気持ちで読ませてくれる、すごいマンガだと思う。
そう思うのは、自分が「すれっからし」というか、競馬必勝法的なものには、ややネガティブなイメージを持つようになってきているからかもしれない。
はじめてナマで競馬を見たのは、もう30年前。振り返れば、無数の馬券本を読んできた。
高本公夫さんの「競馬で勝って歓喜する本」
一戸秀樹さんの「競馬データこれが欲しかった」というデータ本のさきがけ
大橋巨泉さんのコラム本
山口瞳さん赤木駿介さんの「日本競馬論序説」(影響とても受けた)
清水成駿さんの「マジで競馬と戦う本」(勉強になった)
伊藤友康さんの超正当派推理「儲かる競馬」
井崎脩五郎さんの数々の名作
安部譲二さんの馬券本
浅田次郎さんの馬券本「競馬の達人」(ものすごく影響受けた)
田端到さんの「賭けなきゃ勝てない」というすごい本と、いまの血統馬券シリーズ
樋野竜司さんの「政治騎手」シリーズ
調教方法に主眼を置く馬券本
逃げ馬を中心にした馬券本
馬体判断をベースにした馬券本
「短縮ショッカー」馬券本
「Vライン」馬券本
・・どれも、読む分には楽しいけど、さすがに最近は、「まー、これも、なー」みたいな、「超・上から目線」になりつつある。⬅よくない!
ただ、グラサン師匠の案内なら、どんな馬券術も素直に聞く気になれる。
かわいらしさ
楽しませる数々の工夫
取材対象への愛・リスペクト
・・そう、自分は「競馬を好きな人が、競馬についてあれこれ語り合っている」ことを、サービス精神たっぷりに見せてもらえることが、うれしいんだな。
もちろん、これだけ楽しく読ませるための漫画家としての技術、ワザもすごく高いと思うが、ここも、グラサン師匠は、苦労ぶりをまったく見せず、淡々と、力を抜いて、気楽に書いているかのように感じさせている。
とっても、プロだと思う。
グラサン師匠、最高!
概念係と表現係をひとりでやれ
何年か前の話だが、JR九州の九州新幹線開通のCMの素晴らしさに衝撃を受けた。 そのCMのクリエイティブ・ディレクター、古川裕也(ふるかわ・ゆうや)さんの本。
- 作者: 古川裕也
- 出版社/メーカー: 宣伝会議
- 発売日: 2015/09/05
- メディア: 単行本
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まあ、簡単に言うと、広告(というか、クライアントからの依頼)の進行全体を管理するのが、クリエイティブ・ディレクターということか。
古川さんが「何をする仕事なのか」で下記のように書いている。
課題➡アイデア➡エグゼキューション(実行)
この方程式のすべてを考え、決定し、実行するのが、クリエイティブ・ディレクションという仕事である。
あるいは、こう。
茫洋(ぼうよう)とした課題を見つめることから始め、それを解決するアイデアを考え、気の遠くなるようなプロセスを経て、何らかをアウトプットする。
まあ確かに、古川さんが言うように、すべての仕事は、ある意味で、上にあるような方程式で成り立っている、とは思う。
だから、この本のタイトル通り「すべての仕事はクリエイティブ・ディレクションである。」なのだけど、まあ、頭ではわかっても、実際に、いま自分が職場やプライベートで抱えている問題にこの方程式を応用して成功させるのは、古川さんが言うほどは簡単ではないよなー、とも感じてしまう。
ただ、第1章には、方法論が、1から、4まで、ものすごく丁寧に書いてある。ここを繰り返し読むことで、実際の場面で頑張ってみようという気に、少し、なっていく。そういう本だと思う。
1.ミッション(任務・使命)の発見
古川さんはまず仕事の前提には、何らかの不満、欲望があるという。例として、こんな感じが出る。
自分の職場にも、ある。
不満、欲望、なんだかわからないモヤモヤ、これは無数にある。
頻発すべき問いは、これだ。「その問題が、本当の問題なのか?」。
漠たる不満を、確たる不満に昇格させること。
「本当は、このブランドをこういう状態にしたい」「みんなからこう思われたい」を明確化・言語化して、具体的な目的にまで昇華させること。
よい結果を導き出しやすい「明確で正しい困り方」に凝縮させること。
アイデアを考えるべき範囲を限定して、考えやすい状態にすること。
・・古川さんは、これがクリエイティブ・ディレクションの最初の仕事だとする。うーん、整理と議論に、すごく時間がかかりそう。古川さんから、ひとつのヒントが提示される。
ミッション(任務・使命)の発見は、課題からひとつ次元を上げて行うべきだ。
「ミッションに張る」のだ。
「これが来そう」「これが確実に儲かりそう」「この辺が空いている」ではなく、世界にとって重要なミッションをいちばんのコアに置く。
ミッションが自分たちの内部にとどまっている限り、世の中から大きな支持を、そして利益を得ることはできない。
課題を解決した時に得る果実を受け取るのは、自分たちだけではなく、もっと多くの人たちだと考えるということでもある。
もうひとつ、クリエイティブ・ディレクターがよく口にする、共通のセリフがあるそうだ。
「そもそも、これって、どういうことだっけ」
「この問題って、そもそも問題なんだっけ」
「そもそも、いちばん大事なことって、なんだっけ」
「1個だけやるとしたら、そもそも、何をやればいいんだっけ」
「そもそも、これって、やったほうがいいんだっけ」
「そもそも」が連発されている。
常に根源まで遡るのが、クリエイティブ・ディレクターの最初の仕事である。
10年くらい前、職場で何か意見を話す時「そもそも、これって」と必ず最初につける人がいた。その意見は、別に、根源に遡るわけでもなんでもない、単なる個人的な意見がほとんどなのに、毎回つけるので、なんとなく嫌だなーとよく思っていた。だから自分は「そもそも」と言う人は、今でもちょっと嫌いだ。
ただ・・
「課題や不満から、次元を一段上げる」
「いつも根源まで遡る」
・・の2点は、確かにヒントになる言葉だなーと思った。
そして、方法論の2が来る
2.コア・アイデアの確定
「捨てる」のはクリエイティブ・ディレクターの重要な仕事のひとつ。
ワン・フレーズに凝縮する。
「今回何をやるか」を確定する。
「ああ、おおよそ、そういうことをやるのね」ということだけわかればいい。
ここで注意も出る。
「全方位で考えよう」「君たち好きなように自由に考えていいよ」「あらゆる可能性を残しておこう」とか言い出す人物が時折登場する。
そういう人の言うことを聞いてはいけない。
そう、これは思い当たる。
言われた時は正しい気がするけど、すごく拡散して、実現できなくなってしまう感じ。些細な、微妙なことなんだな。
ただ、古川さんでも「絶対いける」と思えるアイデアは必ずわかるわけではないそうだ。しかし・・。
「これは絶対ない」は、ほぼ100%の確率でわかる。
アイデアは、1か所でもダメなところがあれば、即、0点だからである。
では、「いける」は、どう決断するのか。
いいアイデアは、論証できない。
非論理的、直観的である。
ただし、非論理、直観を信用するためには、その時点まで、論理的に突き詰めておかなくてはならない。
それではじめて、直観が活躍する準備ができる。
ここまでの「1」と「2」を、古川さんは「概念係」と呼ぶ。
そして、方法論の3は。
3.ゴールイメージの設定
ここで始めて、受け手を意識する。
みんなに「自分に関係ある」と感じてもらうことが重要だという。
アイデアの意味を超えて「こんな感じ」を設計し、共感を形成し、ヒトを動かす。
肉体的、直感的に、受容されなければ、共感は形成できない。
それは明らかに非論理的出来事だ。
「理由はともかく、こっちのほうがいい」「だってこっちのほうが好きなんだもん」という、「表現」の力でなくては御せない、とても過酷な場所。
・・うーん、話としてはわかるが、ちょっと実感としては難しいな。
そして、最後の方法論4。
4.アウトプットのクオリティ管理
ここで、こんな言葉が出る。
幸いなことに「表現」の点数を上げる原理は存在する。
「びっくりさせる力」と「納得させる力」である。
「びっくりsurprise」と「はたひざ(はたと、ひざを打つ)make sense 」
このふたつが含まれていない傑作は、歴史上存在しない。
このふたつが含まれていれば、ほぼ100%の確率で傑作。
驚きと同時に、「意味」を伝えて、はたと膝を打たせなくてはならない。
「表現」は、要は、言いたいことから相当程度、意外な方が、破壊力を持ちやすい。
ただ、必ず最後「はたひざ」がなければならない。
すごく図式的に言うと、「ああ、こういうことを伝えたいために、これほどの表現が必要だったのか」と、構造的に受容されるべきだ。
右脳+左脳、カラダ・ココロ+アタマ、両方を動かさなければならない。
「はたひざ」とは、目的芸術である限り、必ず持たなくてはならない最終的説得力のこと。
古川さんは、「クリエイティブ・ディレクションの仕事には、最初と最後の2回、『直観的判断』が要求される」と結論する。
「おおよそこういうことをやろう」と「だいたいこんな感じに最後はしていく」という判断は、そうは言っても、だいぶ「えいや!」、賭け事。
みんなの意見も聞いた。ロジカルに考え抜いた。傑作にならざるを得ないように、ほぼ追い込んだ。けれど、決める時は手ぶら。「直観」で決めなくてはならない。
そのギャンブル量を極小化しておくのが、クリエイティブ・ディレクションという技術。
なるほどー。
つまり、クリエイティブ・ディレクターとは「概念係」と「表現係」ということになる。
1. ミッション(任務・使命)を発見し
2. コア・アイデアを確定し
3. ゴールイメージを設定し
4. アウトプットの品質を管理する
・・の、4工程を必ず意識する。
実際、4つの工程が常に直線的に進むわけではない。
途中で止まったり、うまく進まなくて後戻りしてそこからやり直したり、進んでいるうちに確信が持てなくなったり。
稀に強力なアウトプットが先に立ち現れることもないわけではない。
・・確かに、実際には、いろいろなパターンがあるだろうし、当たり前だが、失敗に終わることもあるだろう。
でも、こういう、はっきりした方法論で、クリエイティブな仕事の考え方・進め方を整理してもらえることは、とても参考になった。
もちろん、全然、簡単なことではないけれど・・。
ただ、これを頭のどこかで意識しているか、いないか、だけでも・・、
ちょっとは違う、と、いいな。
競馬通いの「無常」
藤代三郎さんが競馬週刊誌「ギャロップ」で連載している「馬券の真実」という馬券購入コラム?をまとめた本。
今回で23冊目とのこと。ほぼすべて購入しているが、今回も購入。
- 作者: 藤代三郎
- 出版社/メーカー: ミデアム出版社
- 発売日: 2017/08/01
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「外れ馬券シリーズに出てくる人と話しているのかな?」と思いながら、藤代さんを見たことが何度かある。
パドック馬券、返し馬からヒントを得ての馬券、どの騎手が返し馬で結構強く乗るか、単勝・複勝の組み合わせなど、関心の持ち方も、自分と藤代さんはちょっと似ているかもしれない。
10年くらい前の「外れ馬券」本を、寝る前に取り出して、読み返すこともある。
馬名や騎手名が少し古くなるだけのことで、やっていることは同じだ。同じ衛星がグルグル同じところをまわっているように、馬券術の検討も、いつも同じところをまわっている。すばらしい!
なので、何度読み返しても、ディテールを忘れているので、毎回、面白く読める。
何か、馬券のヒントをつかみ・・
馬券術を切り替え・・
少しうまく行ったりもするが・・
やはりうまく行かず・・
「全治数か月の損害」となり・・
また何かヒントを・・
を、ずっと繰り返す、安定感。
自分は藤代さんほど多く競馬場に通っていないので、ここまで馬券術切り替えはできない。また多分、投入している額も、藤代さんより二桁低いので、シビアさという面でも、劣る。
でも、より収益を増やすために馬券術の見直しはいつもしているので、やっていることの基本形は同じだ。なので、毎回、共感している。
この本(というかシリーズ)の「隠しテーマ」が「無常」だと思う。
競馬仲間が、新たに加わり、何年か同じ時間を過ごし、やがてそれぞれの事情の中で、距離を置かざるを得なくなる。そんな、出会いと別れ、みたいな話を、藤代さんはよく書いている。
そして藤代さん自身も年をとって競馬に通えなくなる日のこともよく書いている。
いまが永遠ではなく、いまは変わり続け、やがて自分もいなくなる。
根底には、そんな「無常」観があって、・・でも、本を普通に読むときの感じは、楽しさ全面展開の「いつも同じことの繰り返し」。
外れ馬券シリーズは、そういうシリーズだ。
その藤代さんも70歳を超えた。
これが23年目ということは、このシリーズが始まったときは、藤代さんは40代後半だったということになる。
多くの馬券術を検討し、競馬仲間との出会いと別れを繰り返し、いま70歳・・。
そして、20代後半から読み続けている自分も、いま50歳を超えた・・。
「無常」を、改めて感じる。
すごいシリーズかもしれない。
「やるべきこと」の違和感
書店で平積みになっていて、最初は「まあ、いいか、読まなくて」とも思ったが、後日、思い直して、購入して読んだ。
- 作者: 田口壮
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/03/30
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2軍戦といえば、自分は川崎市の読売ジャイアンツ球場に横浜戦を1回だけ見に行ったことがある。お客さんは少ないが、2軍選手の追っかけ女子がたくさんいて、試合も結構面白かった。
ただ、よく考えると、確かに、プロ野球2軍、というか、プロ野球選手の全体像って、ほとんど何も知らない。
だから、この本の帯の情報は、そうなのかーと思いながら、読んだ。
各球団の選手総数は「70人」。
1軍「28人」、2軍「42人」だから、2軍選手の方が数は多い。
12球団あるからプロ野球選手総数は「最大840人」。つまり「日本で最も野球のうまい840人」ということになる。
その840人のうち、「110人から115人くらい」はシーズンオフに入れ替わる。ドラフト等で入ってきた数だけ、戦力外通告が出るから。(年末には強制的に13%くらいクビになる世界だから厳しい。毎年「プロ野球・戦力外通告を受けた男たち」が作られるわけだ)
2016年からオリックス・バファローズで2軍監督を務める、著者の田口壮さんはサービス精神が旺盛。
そもそも二軍の使命とは何かから、日米の違い、観戦ガイド、二軍監督の日常まで、きっちり書かれている。
再三「ヨメ」の話が盛り込まれ、変わったこだわりや失敗談もあり、面白く読むことができた。
田口さんが2軍選手に常々言っているのが、「プロ野球人生におけるチャンスは、3年間で9回くらいしかない」だという。
このチャンスは、だいたい入団から3年ほどの間に降りてくるもの。それをつかむことができるのは、1年に3回あるかないか。
「年に3回しか降ってこないチャンスをいかにものにできるか」が、プロ選手としての勝負どころだという。
まあ、改めて、1軍の華々しい場所が、いかに特別中の特別かがよくわかる。
ただ、今回読んでいて、少し気になったことがあった。それは田口さんが(書いていないだけで、本当は違うのかもしれないが)「2軍監督」の仕事にあまりにも専念している(ように見える)こと。
個々の選手への接し方、育て方、コーチとの接し方、2軍チーム全体の作り方などばかりで、田口さんが、それらを通じて「究極的には」何を目指しているのか、なんとなく曖昧に感じられてしまった。
田口さんたちが、究極的に目指すものは、普通に考えれば「1軍チームの優勝」のはずだ。そしてオリックス・バファローズはもう20年間リーグ優勝がなく、2位が2回だけ。下位低迷がほぼ定位置になっている。つまり、いま田口さんたちは、相当に危機的状況なのではないだろうか。
もちろんチーム予算や、特殊な事情、オーナーやGMの問題もあるだろうし、外からはうかがいしれないことも多数あるだろう。
ただ、なんとなく、田口さんの本を読んでいると、「いや、1軍のことは一義的に1軍監督マターだから、2軍監督の関わりは、どうしても限定的」という感じで、1軍チームの不振をいちばんの問題に捉えていない感じに見えてしまった。(いや、本当はGMや一軍監督とガンガン議論しているけど書いてないだけかもしれないけど)
なぜそんなことが気になるかと言えば、自分のまわりにも、「会社全体の状況より、自分の部署の最適化、管理に集中」みたいな、タコツボ管理職がたくさんいるから。
同業他社と戦っているのに、部署の若手社員の育成やルーティン業務だけに専念して、相手に勝つ新たなアイデア、試行錯誤などを考慮する発想がない。会社としていちばん大事なことは、他社に勝つことなのに「いや、そういう大きなことを考えるのはオレの仕事じゃない」などと、堂々と開き直って言ったりする。
業界1位、シェア1位になるには、いま、どんな改革・修正、選択と集中、会社の仕組み見直し、ヒト・モノ・カネの再配分が必要なのか。
仮にも管理職の一員なら、当事者として、そうしたことをいつも考えていて、当然ではないだろうか。
20年間、業界下位にずっと低迷している会社の製造部長が、「いやー、ウチの現場、若手が伸びず、毎日、大変ですわ。苦戦してます」みたいなことだけを言っていたら、普通に考えたら、あまり積極的には共感できないと思う。むしろ、危機感、緊張感が足りないぐらいに思われてしまいそうだ。
2軍監督の悪戦苦闘はそれなりに面白いけど、田口さん、それだけやっててもダメでしょ、「やるべきこと」はそれだけではないでしょ、と、つい、余計なお世話を言いたくなってしまう感じ。田口さんほどの大スター監督に。
何度も書いているように、田口さんは本当は「一軍チームの仕組み、意識、ルール等の大改革提案」を、いろいろやっているのかもしれないが、この本だけを読むと、2軍監督の仕事に専念しているようにも、見えてしまった。
全体的には、とても楽しい、面白い本だが、なんとなく「2軍監督専念感」だけは、日頃の問題意識と重なって、ちょっと気になってしまった。