「見たこと」だけを信用するな

サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか

サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか

高校生のころまで遊びでやっていただけだったサッカー。2000年代に入って「見るスポーツ」として、よく見るようになった。

過大評価されている?コーナーキック

コーナーキックからシュートにつながる可能性はわずか20.5%だった。つまりコーナーキック5回を蹴って、ようやくシュートが1本生まれる。

コーナーから生じたシュートが成功するのは、9本のうち1本。コーナーキックから得点をして、片方のチームが喜びを爆発させ、もう一方のチームがうなだれる、私たちがお馴染みだと思っているシーンは、これほど希にしか生じていなかったのだ。

コーナーから生じるシュートと、そこから生まれる可能性を数値化すると、平均して、コーナーから点が入る可能性は約2.2%しかない。

シュート数と勝率は比例しない

欧州リーグのデータで、相手よりシュートを多く放ったチームが試合に勝つ確率を調べると・・・

シュート数の多いチームの勝率は5割以下だった。全体では47%、イタリアとドイツでは45%とわずかに低い。

枠内シュートのみを対象にすると、シュート数の多いチームの勝率はわずかだが上がる。リーグによって最小で50%、最大58%だった。

過少評価されている?守備

無失点試合は平均して1試合あたり勝ち点2.5ポイントの価値があることがわかった。

勝ち点換算で考えた場合、0点に抑えることは1点を取ることよりも大きな価値がある。

サッカーで守備が過少評価されている。かつ間違った方法で評価されている。これは、人が守備を理解するうえでの妨げになっている、心理的な現象によるものだ。

人間は、実際に起きたことを記憶し、過度に重視しようとする傾向がある。そして「起きなかったこと」は簡単に無視してしまう。

ACミランとイタリア代表のキャプテンとして鳴らした名選手、パオロ・マルディーニはめったにタックルをしないことで知られていた。正しいポジショニングをとることで、リスクの芽を事前につみとっていたからだ。

良いディフェンダーはタックルをしない。吠える犬は、吠えなければならない状況に陥った犬である。良い守備をすることは、吠えない犬であることなのだ。

サッカーを生観戦することが大好きだが、「人間は実際に起きたことを記憶し、過度に重視しようとする傾向がある」なら、むしろ試合をたくさん見れば見るほど、サッカーの偏見にとらわれるようになってしまうかもしれない。

だまされないように、自分の考え方のクセをよく認識して試合を見ないといけない。

サッカーを離れ、仕事の現場でも、「良いディフェンダーが過少評価される」傾向は起こりがちのように思う。

スーパースターをそろえても必勝ではない。弱者のデータ革命戦略が起きるかも?など、実人生にも参考になりそうな示唆が多くあった。