味のありすぎる嬉しさ

コンビニで買った。

ナニワ金融道」前の青木雄二さんにもし会えていたとして、自分は青木さんを「ナニ金」大成功に導くお手伝いができただろうか。

  • この偏執狂的なパワー
  • 味のありすぎる絵や細部の書き込み
  • 資本論への常軌を逸するこだわり
  • いちいち愛すべき多くの登場人物
  • エネルギーが充満しまくる展開

この漫画を「ナニ金」前に発見できたとして、「これは時代を変えるスーパーヒット作が書ける人だ」と、確信できただろうか。

収録作品のひとつ「悲しき友情・3、アーッ神様の巻」の中に、青木さんがモデルらしき、資本論に傾倒した漫画家志望の青年の投稿作品を、出版社のふたりが話し合う場面がある。

笹原「(青年の作品読んで)亀井さん、これは期待できますよ」

亀井「何!本当か。どれどれ、・・」

亀井「(なるほど・・)」

亀井「笹原やっぱりダメだよ。ネームが多すぎる」

笹原「しかし将来化ける可能性ありませんか?佳作に入れておいても損じゃないと思うんですけど」

亀井「いやダメだな!もったいぶって自分勝手なことをくどくど言ってる御託だぜ」

笹原「亀井さん、将来のためにも毛並みの違ったものも入選に・・」

亀井「バカ!労働者が資本家に搾取されるなんてもう死語だよ。第一考えてもみろよ。ルーマニアソ連も崩壊したんだ。共産主義が間違いであったことはガキでも知っているんだ。我々編集部は仕事だから読みたくないものでも3ページだけは読むよ・・。だけど読者はこんなもの1ページも読まないって!」

笹原「担当をつけてやればなんとかなりませんか!」

亀井「ダメだって。こいつの頭は思想で凝り固まっている。娯楽ということがまるでわかっていない人間だ。笹原、売れないものを掲載してどうするんだ?我々だって利潤を追求している一企業だってことを忘れるなよ!これは落とせ。わかったな」

笹原「わかりました(バサッと捨てる)」

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日本中で起きている、異物(異質な何か)を前に交わされるやり取りだろう。自分も、実際にこうした事態に直面すれば、亀井さん的に対応してしまったようにも思う。

それにしても、味がありすぎる。そのあと「ナニ金」大成功があろうとなかろうと、この短編集単体でも、なんというか、そのパワーだけで嬉しくなる。