幼児期の記憶のあやふやさ

買ったまま、ずっと読んでいなかった本。

昏睡状態の人とのコンタクトや、作中の「コーマワークセンター」という「医療研究機関?」などのリアリティ感とか、こういう感じが気になる人とそうではない人の差がはっきり出そう。

この小説が「このミス大賞」に輝き、映画化されるくらい評価されているのだから、多くの人はあまり気にせず楽しむのだなと感じた。

たびたび出てくる、主人公の弟が海でおぼれかけるシーン。自分が小学生のときに、渓谷の大きな岩からちょっとだけ、滑り落ちて、ものすごくこわい思いをした体験を何度も思い出した。

なんというか、幼児期の記憶のあいまいさというか、その前後の記憶はほとんどないのに、そのわずかな時間のことだけは鮮烈に覚えている感じ。

そうした幼児記憶の不気味さ、というか、あやふやさが、この小説ではとてもうまく生かされていると感じた。