客観的事実にだけ注目しよう

東野圭吾さんのガリレオシリーズ第1作。以前読んだことはあるが、また読んでみた。

探偵ガリレオ (文春文庫)

探偵ガリレオ (文春文庫)

 

短編5本。

まあ、ナゾ自体は「きっとこのナゾは何か理系的な仕掛けで解き明かされるのだろうなー」と思いながら読んでいくので、そんなに、エーッと驚くことにはならならない。

  • 「突然燃え上がった若者の頭」のナゾは「レーザー光線による発火の仕掛け」

  • 「池に浮かんだデスマスク」のナゾは「雷による衝撃波」

  • 「心臓だけ腐った男の死体」のナゾは「超音波加工による強烈な破壊作用」

  • 海上のビーチマット炎上」のナゾは「ナトリウムによる水素爆発」

  • 幽体離脱した少年」のナゾは「液体窒素の流出による蜃気楼のような現象」

この小説の面白さは、物理学科・湯川学助教授がカッコよく、少しずつ解明していくプロセスにある。

さらに、

  • 場面展開が次々に変わって、飽きない

  • 草薙俊平刑事が「まったく理系的知識がない人」として出てくるので、読者としては「絶対に置いてけぼりになることはない」と安心して読み進められる。

  • 草薙との会話シーンで、速い展開も、理系的知識も整理できる。

・・など、うまい作りになっているなー、と考えさせられた。

随所に出てくる、湯川学の姿勢というか、物の見方の原点、基本的考え方も、とても共感できた。

「幽霊の正体は、いつも案外つまらない」

「世間で騒がれている不思議な現象のいくつかは流体の悪戯」

「人間の思い込みというのは厄介なものだ。シャボン玉の中に空気が入っていることは知っているのに、目に見えないがために、その存在を忘れてしまう」

「そんなふうにして、いろいろなものを人生の中で見落とさなきゃいいがね」

「人間の記憶とはそういうものさ。錯覚する動物なんだ」

「特殊性に目をくらまされず、客観的事実にだけ注目すれば、また別の解答も見えてくる」

うーん、これは湯川学ファンになってしまうなー!