「構図の安定感」は超強い

東野圭吾さんの探偵ガリレオシリーズの第2弾。短編5作品。

予知夢 (文春文庫)

予知夢 (文春文庫)

うーん、夢中で読んでしまうんだなー。

すっかり、草薙俊平刑事と湯川学助教授ファンになってしまった!

科学による謎解き自体は?

人によって感想は違うだろうけど、自分は、第1作と同様に、「天才物理学者による科学的知識、理系的知識を使った謎解き」自体に感動する、ということはなかった。

それはあくまで味付けというか、まあ、そういうふうに謎解かれるんでしょうね、ハイ、ハイ、くらいの感じ。

第一章の予知夢はちょっと無理矢理感があるし、第二章の幽霊騒動は科学トリックなし。

第三章の「家が揺れる」という謎でも「物体にそれぞれ固有振動数があるから、なんらかの原因でまわりの環境が変化して共振を起こしている」と言われても、この設定だけでは、すごく納得できるわけではない。

第四章の「他殺に見える自殺」のカギの「高密度ポリエチレン」を使う話も、後片付けをするなら、これでなくてもいい感じもして。

第五章の「首つり自殺見せかけ」の「ER流体」を使った謎解きも、まあそこに驚くことが話の中心ではない感じ。

楽しいのは「読むプロセス」

科学的知識による謎解きにうならなくても、圧倒的に面白いのは何か?

この短編5本が、ガリレオシリーズ第1作と同様に、下記の構成がきっちり守られているためかもしれない。

  • 微妙な伏線が貼られていそうな、思わせぶりで、わかりやすい冒頭。

  • 科学的知識ゼロの「教えてもらう役」草薙俊平刑事と湯川学助教授の最初の意見交換。

  • 読者の予想のウラ、意外性のある展開、新たな場面設定。

  • 湯川による解答。

  • 余韻がありまくるエンディング。

誤解を恐れずに言えば、「様式美」とでもいうような、安定感のある形式だ。

何も知らない人が聞けば、「ワンパターンじゃん!」「マンネリ、いつも同じじゃん!」とでも言われそうな感じ。

でも、面白い。全然、大丈夫。

湯川学助教授の時折出るつぶやきにも、「確かに、そうかもー!」と思わず納得させられてしまったりする。

「人間はみんな、何かに操られているんだよ」

「この世には時々、この手の極めて低い確率で起きる偶然というものが生じる」

「だけど1年という数字にどんな意味があるんだい?」

読者は「ええーーー!そうだったのかーーー!」と謎解きに驚きたいだけじゃないんだよな。

いや、すごく驚くことができるなら、それでもいいんだけど、それがマストじゃない。

  • 微妙な伏線

  • 一見まさか?というような状況の提示

  • いつも同じコンビの会話

  • 最初の思い込みがひっくり返る快感

  • 余韻

・・これでいいんだよな。

いやむしろ、量産するなら、こっちを目指すべきなんだよな。

「読者がすごく驚くものじゃなきゃダメ」みたいな感じで自分を追い込んではいけないな。

「構図の安定感」は、それはそれで、とても強いものなんだから。