「構図の安定感」は超強い
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/08/01
- メディア: 文庫
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うーん、夢中で読んでしまうんだなー。
すっかり、草薙俊平刑事と湯川学助教授ファンになってしまった!
科学による謎解き自体は?
人によって感想は違うだろうけど、自分は、第1作と同様に、「天才物理学者による科学的知識、理系的知識を使った謎解き」自体に感動する、ということはなかった。
それはあくまで味付けというか、まあ、そういうふうに謎解かれるんでしょうね、ハイ、ハイ、くらいの感じ。
第一章の予知夢はちょっと無理矢理感があるし、第二章の幽霊騒動は科学トリックなし。
第三章の「家が揺れる」という謎でも「物体にそれぞれ固有振動数があるから、なんらかの原因でまわりの環境が変化して共振を起こしている」と言われても、この設定だけでは、すごく納得できるわけではない。
第四章の「他殺に見える自殺」のカギの「高密度ポリエチレン」を使う話も、後片付けをするなら、これでなくてもいい感じもして。
第五章の「首つり自殺見せかけ」の「ER流体」を使った謎解きも、まあそこに驚くことが話の中心ではない感じ。
楽しいのは「読むプロセス」
科学的知識による謎解きにうならなくても、圧倒的に面白いのは何か?
この短編5本が、ガリレオシリーズ第1作と同様に、下記の構成がきっちり守られているためかもしれない。
微妙な伏線が貼られていそうな、思わせぶりで、わかりやすい冒頭。
科学的知識ゼロの「教えてもらう役」草薙俊平刑事と湯川学助教授の最初の意見交換。
読者の予想のウラ、意外性のある展開、新たな場面設定。
湯川による解答。
余韻がありまくるエンディング。
誤解を恐れずに言えば、「様式美」とでもいうような、安定感のある形式だ。
何も知らない人が聞けば、「ワンパターンじゃん!」「マンネリ、いつも同じじゃん!」とでも言われそうな感じ。
でも、面白い。全然、大丈夫。
湯川学助教授の時折出るつぶやきにも、「確かに、そうかもー!」と思わず納得させられてしまったりする。
「人間はみんな、何かに操られているんだよ」
「この世には時々、この手の極めて低い確率で起きる偶然というものが生じる」
「だけど1年という数字にどんな意味があるんだい?」
読者は「ええーーー!そうだったのかーーー!」と謎解きに驚きたいだけじゃないんだよな。
いや、すごく驚くことができるなら、それでもいいんだけど、それがマストじゃない。
微妙な伏線
一見まさか?というような状況の提示
いつも同じコンビの会話
最初の思い込みがひっくり返る快感
余韻
・・これでいいんだよな。
いやむしろ、量産するなら、こっちを目指すべきなんだよな。
「読者がすごく驚くものじゃなきゃダメ」みたいな感じで自分を追い込んではいけないな。
「構図の安定感」は、それはそれで、とても強いものなんだから。