「選挙制度」を改善しよう
「面白い」という評判を読んで、購入した。
- 作者: 畠山理仁
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/11/24
- メディア: 単行本
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いまの選挙制度の見えにくい参入障壁
政策とは何か
「売名」という言葉の曖昧さ
いやーホントいろんな人いる!
日本の選挙制度はこのままでいいの?
・・などなど、考えさせられる点が多くあった。
彼らを無視してしまう理由は?
第一章に出るマック赤坂さんを、何回かナマでチラッとだけ見たことがある。この本の中にも書かれているが、自分も見かけるたびに、まわりの人と同様に、やや足早に通り過ぎていた。
畠山さんは言う。
マックの立候補を無視することはたやすい。
街中で出会ったマックを冷笑するのも簡単なことだ。
もっと楽なのは、選挙に関心を持たず、選挙と無関係のスタンスをとることだ。
クールでかっこよく見える。
忙しい毎日を送る上での賢さなのかもしれない。
いや、クールでかっこよく・・、そこまでは考えていないよ・・、と思いかけたが、確かに、マックさんみたいな人たちのことを、どう考えたらいいのか、自分の中で決めきれていないのも事実だなと感じた。
「自分の理想の社会を実現するために情熱を燃やしている人」なのか。
「売名を目的に、とにかく目立つことをしてやろうと考えているだけの人」なのか。
いや、別に本人の自由で、どっちだっていいんだし、そもそも、どっちだろうと、自分には関係ない。
だけど、単なる遊び半分の売名としては見合わなすぎる熱心さではないか。でもとても当選を真面目に考えているとも思えないし・・。わからなすぎて、考えると、ものすごくややこしいことになりそうで、なんだかモヤモヤする。
だから、とりあえず、無視というか、足早に通り過ぎようとしてしまうのかもしれないと感じた。
供託金制度がない国がある
日本の供託金は世界的に見てとても高額なのだという。
ところが・・
フランス、ドイツ、イタリア、アメリカは供託金制度なし
イギリス:7万5千円
カナダ、オーストラリア:9万円
韓国:150万円
畠山さんは、日本の供託金が下がることはないだろうという。
確かに、事実上、立候補の「参入障壁」になっている供託金の額が下がれば、立候補がしやすくなってしまう。そんな制度変更を、毎回、厳しい選挙を戦って苦労している現職議員があえて進める理由はない。
また「遊び半分の、売名行為的な立候補がより蔓延する」「タダで政見放送をできるなら、立候補者が無限に膨らんで収集がつかなくなる」「ポスター掲示板や選挙公報はどうなるんだ」など、懸念の声も当然考えられる。
まあ、よく考えれば、別に、遊び半分の立候補だって社会的には大きな問題ではないだろうし、政見放送やポスター・公報については規模を縮小してネットで発信することにするなど、対策はいろいろあると思う。でも、供託金を下げることに大きなメリットを感じる人も少ないので、まあ、進むわけないよなー。
また「売名行為」って、すごく悪いイメージのある言葉だなと改めて思った。別に候補者に「売名」されたって、よく考えれば、そんなに実害はないと思うけれど、なんだか、生理的にとてもイヤな感じ。
よくわからない、異物感のある人を、脳の直観で避けているのかなー。「売名」って、よく考えると、定義のはっきりしない、すごく曖昧な言葉なんだけど・・。
供託金制度については「高額な供託金が立候補の機会を奪っている」として、いま東京地裁で裁判中とのこと。
投票義務付けの国もある
畠山さんが継続取材する「無頼系独立候補」の中に、元鹿島建設社員で、立候補を繰り返しながら、兵庫県加西市長を務めた、中川暢三さんという、とても興味深い方がいる。
中川さんは低投票率を嘆き、「投票したら1万円クーポン支給」という政策を掲げたという。
これも自分の不勉強でまったく知らなかったが、オーストラリアやイタリア、ペルーでは投票が義務付けられているそうだ。
投票率が毎回90%を超えるオーストラリアは、投票しないと罰金を取られるが、投票所に行くとソーセージを挟んだパンを食べられるとのこと。
「人々が民主主義から離れないように工夫していくのも政治の役割」という考えのもと、選挙制度が作られているそうだ。
「このままでいいのか」が問われる
もちろん、読んでいて、「まあ、これは、ちょっと変わった方、というだけの人かもな・・」という人もいる。また、「畠山さんは、まあもともと、選挙そのものが、ある程度好きでもあったのだろうなー」とも思った。
ただ「無頼系独立候補」の継続取材をしているうちに、どんどんハマッて、やがて「変わった方」というぐらいの見方ではまったく収まらない、選挙制度や民主主義について、いろいろな示唆に富む方の姿に驚き、敬意を持つようになったのではないか。
「選挙は人を育てる」を体現するかのような高橋尚吾さん。
「なんらかの縁のあるところで、自分の政策と手腕を発揮できるなら、活動の舞台(場所)にこだわらない。そこが一般的な土着の政治家と違うところ」と立候補を続ける中川暢三さん。
比喩ではなく本当に「命がけで立候補している」金子博さん。
こうした人たちの思いを追った第三章がいちばん面白かった。
そして「選挙のしくみって、本当にこのままでいいのかな」と、改めて考えさせられた。
「地盤、看板、カバン」がないと当選が難しく、新しい血、新規参入が実現しにくい実態
世界に例を見ない高額の供託金
投票率の低さが言われても、議論されにくい投票の義務付け
そもそも「議員」という存在に一般人が感じる、縁遠さ。どことなく感じる、うさんくささ
それでもサラリーマンが開き直って立候補するには、職場や経済的基盤も、親戚・知人関係も、いったんリセットの覚悟が必要という現実
このままでいいのか・・?
うーん、いまの議員にしてみれば、選挙への参入障壁は高ければ高いほうがいいのだから、制度は簡単には変わるわけないよ。
投票率だって、高くなったら現職が有利っていうわけじゃないんだから、簡単には変わるわけないよ。
・・だから、このままで仕方ないのか?
「面白い人物ルポ」にとどまらず、「選挙制度の、民主主義の仕組みの再構築」を思わず考えてしまう、「このままではいけない!」と叫びたくなってしまう、なかなかの本。