人の幸せに口出しするな

探偵ガリレオシリーズはやっぱり面白いと思って購入した。

ガリレオの苦悩 (文春文庫)

ガリレオの苦悩 (文春文庫)

探偵ガリレオ」「予知夢」のパターン通りでも、全然面白いけど、今回はまた進化する。

第1章は、痕跡を残さない手のこんだトリックを解くが・・実は「実験のいい加減さを話しちゃう、お茶目な湯川」という話。

第2章は、いちばん面白くて、金属を望み通りに変形させるトリックを解くが・・実は「恩師の、見えにくい本当の狙いをズバリ指摘する、人間ドラマ男の湯川」という話。なーるほどー、と、思わず、うなってしまった。

第3章の、ホリグラムを使った立体写真のトリックもいいが、短い話の中で、いかにもありそうなリアリティが見えて、印象深い話。

第4章も、水晶の振り子を使う中学生の女の子がうまく使われていて、湯川がウソを見抜くところが、またいい。

第5章の湯川への挑戦者の話。「超高密度磁気記録」を使ったトリックを見破るが、この話の挑戦者はちょっと変わった人過ぎる感じもした。

湯川の決めゼリフは今回もよかった。

「自分でやってみる」が一番大事

価値のない実験なんてない。

まずはやってみる。ーその姿勢が大事。

理系の学生でも、頭の中で理屈をこねまわすばかりで行動の伴わない連中が多い。

どんなにわかりきったことでも、まずやってみる。

実際の現象からしか新発見は生まれない。

実験してみる、行ってみる。会ってみる。マネて、書いてみる。

確かに、自分も、頭いい人ぶって、理屈こねまわしちゃいそう。気をつけろ!

幸せに口出しするな

神秘的なものを否定するのが科学の目的じゃない。

彼女は振り子によって、自分自身の心と対話をしている。

迷いを振り切り、決断する手段として使っているにすぎない。

振り子を動かしているのは、彼女自身の良心だ。

自分の良心が何を目指すのかを示す道具があるのなら、それは幸せなことだ。

我々が口出しすべきことじゃない。

「科学」の効力の限定性、というか、振りかざすものじゃない、という謙虚さ。湯川のこういう達観した感じも、とてもいいと、改めて思った。