人の幸せに口出しするな
探偵ガリレオシリーズはやっぱり面白いと思って購入した。
- 作者: 東野 圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/10/07
- メディア: 文庫
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第1章は、痕跡を残さない手のこんだトリックを解くが・・実は「実験のいい加減さを話しちゃう、お茶目な湯川」という話。
第2章は、いちばん面白くて、金属を望み通りに変形させるトリックを解くが・・実は「恩師の、見えにくい本当の狙いをズバリ指摘する、人間ドラマ男の湯川」という話。なーるほどー、と、思わず、うなってしまった。
第3章の、ホリグラムを使った立体写真のトリックもいいが、短い話の中で、いかにもありそうなリアリティが見えて、印象深い話。
第4章も、水晶の振り子を使う中学生の女の子がうまく使われていて、湯川がウソを見抜くところが、またいい。
第5章の湯川への挑戦者の話。「超高密度磁気記録」を使ったトリックを見破るが、この話の挑戦者はちょっと変わった人過ぎる感じもした。
湯川の決めゼリフは今回もよかった。
「自分でやってみる」が一番大事
価値のない実験なんてない。
まずはやってみる。ーその姿勢が大事。
理系の学生でも、頭の中で理屈をこねまわすばかりで行動の伴わない連中が多い。
どんなにわかりきったことでも、まずやってみる。
実際の現象からしか新発見は生まれない。
実験してみる、行ってみる。会ってみる。マネて、書いてみる。
確かに、自分も、頭いい人ぶって、理屈こねまわしちゃいそう。気をつけろ!
幸せに口出しするな
神秘的なものを否定するのが科学の目的じゃない。
彼女は振り子によって、自分自身の心と対話をしている。
迷いを振り切り、決断する手段として使っているにすぎない。
振り子を動かしているのは、彼女自身の良心だ。
自分の良心が何を目指すのかを示す道具があるのなら、それは幸せなことだ。
我々が口出しすべきことじゃない。
「科学」の効力の限定性、というか、振りかざすものじゃない、という謙虚さ。湯川のこういう達観した感じも、とてもいいと、改めて思った。