競馬通いの「無常」

藤代三郎さんが競馬週刊誌「ギャロップ」で連載している「馬券の真実」という馬券購入コラム?をまとめた本。

今回で23冊目とのこと。ほぼすべて購入しているが、今回も購入。

外れ馬券を撃ち破れ

外れ馬券を撃ち破れ

藤代さんは東京競馬場の指定席で何度も見かけている。時には、楽しそうに誰かと話していたり、電話で盛り上がっていたりもする。

「外れ馬券シリーズに出てくる人と話しているのかな?」と思いながら、藤代さんを見たことが何度かある。

パドック馬券、返し馬からヒントを得ての馬券、どの騎手が返し馬で結構強く乗るか、単勝複勝の組み合わせなど、関心の持ち方も、自分と藤代さんはちょっと似ているかもしれない。

10年くらい前の「外れ馬券」本を、寝る前に取り出して、読み返すこともある。

馬名や騎手名が少し古くなるだけのことで、やっていることは同じだ。同じ衛星がグルグル同じところをまわっているように、馬券術の検討も、いつも同じところをまわっている。すばらしい!

なので、何度読み返しても、ディテールを忘れているので、毎回、面白く読める。

  • 何か、馬券のヒントをつかみ・・

  • 馬券術を切り替え・・

  • 少しうまく行ったりもするが・・

  • やはりうまく行かず・・

  • 「全治数か月の損害」となり・・

  • また何かヒントを・・

を、ずっと繰り返す、安定感。

自分は藤代さんほど多く競馬場に通っていないので、ここまで馬券術切り替えはできない。また多分、投入している額も、藤代さんより二桁低いので、シビアさという面でも、劣る。

でも、より収益を増やすために馬券術の見直しはいつもしているので、やっていることの基本形は同じだ。なので、毎回、共感している。

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この本(というかシリーズ)の「隠しテーマ」が「無常」だと思う。

競馬仲間が、新たに加わり、何年か同じ時間を過ごし、やがてそれぞれの事情の中で、距離を置かざるを得なくなる。そんな、出会いと別れ、みたいな話を、藤代さんはよく書いている。

そして藤代さん自身も年をとって競馬に通えなくなる日のこともよく書いている。

いまが永遠ではなく、いまは変わり続け、やがて自分もいなくなる。

根底には、そんな「無常」観があって、・・でも、本を普通に読むときの感じは、楽しさ全面展開の「いつも同じことの繰り返し」。

外れ馬券シリーズは、そういうシリーズだ。

その藤代さんも70歳を超えた。

これが23年目ということは、このシリーズが始まったときは、藤代さんは40代後半だったということになる。

多くの馬券術を検討し、競馬仲間との出会いと別れを繰り返し、いま70歳・・。

そして、20代後半から読み続けている自分も、いま50歳を超えた・・。

「無常」を、改めて感じる。

すごいシリーズかもしれない。