箱根史と恋愛と再生術

週刊文春で推薦されていて「こういう小説、古そうだし、買っても、読むかなー?」と思ったが、購入して読んでみた。

箱根山 (ちくま文庫)

箱根山 (ちくま文庫)

お話は、様々な利権抗争のあった、行楽の山・箱根を舞台に、ある地域のライバル旅館A対Bの因縁があり、そこに旅館Aの跡継ぎ候補の好青年17歳と、旅館Bの跡継ぎっぽい女子高生16歳のとってもいい感じの恋愛が絡む・・、というもの。

いや、普通に楽しく読んだ。

f:id:Hebiyama:20171218080748j:plain

これまでも、箱根や伊豆に行った時に「あれ、西武バスが走っている。ふーん、西武って、埼玉の方だけじゃないんだ?」みたいに、「うん?」と瞬間的に思ったことはあった。

ただ、西武・東急・小田急・箱根鉄道の抗争、いま「なんとかライン」となっている自動車専用道路の開発や十国峠の因縁、富士屋ホテル周辺の感じ、箱根の各地域の対立などなど、この「箱根山」を読めば、なるほどそうだったのか!とわかることが、自分の中ではあまりはっきり意識されていなかった。

・・まあ、箱根に来ても、ブラブラと、ボケーッとしているだけなので。

なので、この本は「知られざる箱根プチ抗争史」として楽しむこともできた。

また、「プラトニックだけど、たがいに、憎からず、相手を思う・・」って感じの、ふたりの距離感の書き方も、なんだか、すごくいいなーと感じた。・・自分も17歳くらいの時、こんなことできたら、どんなによかっただろうな。

自分の不勉強で、作者の獅子文六さんの名前自体、この小説の紹介を読むまで知らなかった。NHKの朝ドラの1回目を書いている方なんだな。なんだか、いかにも、と思った。

また、この文庫本の売り方というか、「再生のさせ方」もうまいな、と思った。

とてもかわいい表紙の絵。(ボブa.k.aえんちゃん)

f:id:Hebiyama:20171218080713j:plain

最初にある人物相関図の絵。(ボブa.k.aえんちゃん)

f:id:Hebiyama:20171218080721j:plain

帯に書かれた「冒頭の会議は退屈だけど80ページまで読んでみて!」の言葉。

f:id:Hebiyama:20171218080729j:plain

これだけ、ユーザー目線で、サービス精神を持って工夫して、うまく「再生」してもらえると、自分のような「古い小説はちょっとなー」とか言っている人にも届く可能性が出る。

また、いま自分は「獅子文六さんの他の本も見てみようかな」と思っているくらいで、こういう読書範囲の拡大にも、一助になってくれそう。

「箱根史」と、

「恋愛」と、

読ませるための「再生術」。

なかなか、いろいろ考えさせてくれる小説だった。