箱根史と恋愛と再生術
週刊文春で推薦されていて「こういう小説、古そうだし、買っても、読むかなー?」と思ったが、購入して読んでみた。
- 作者: 獅子文六
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2017/09/06
- メディア: 文庫
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いや、普通に楽しく読んだ。
これまでも、箱根や伊豆に行った時に「あれ、西武バスが走っている。ふーん、西武って、埼玉の方だけじゃないんだ?」みたいに、「うん?」と瞬間的に思ったことはあった。
ただ、西武・東急・小田急・箱根鉄道の抗争、いま「なんとかライン」となっている自動車専用道路の開発や十国峠の因縁、富士屋ホテル周辺の感じ、箱根の各地域の対立などなど、この「箱根山」を読めば、なるほどそうだったのか!とわかることが、自分の中ではあまりはっきり意識されていなかった。
・・まあ、箱根に来ても、ブラブラと、ボケーッとしているだけなので。
なので、この本は「知られざる箱根プチ抗争史」として楽しむこともできた。
また、「プラトニックだけど、たがいに、憎からず、相手を思う・・」って感じの、ふたりの距離感の書き方も、なんだか、すごくいいなーと感じた。・・自分も17歳くらいの時、こんなことできたら、どんなによかっただろうな。
自分の不勉強で、作者の獅子文六さんの名前自体、この小説の紹介を読むまで知らなかった。NHKの朝ドラの1回目を書いている方なんだな。なんだか、いかにも、と思った。
また、この文庫本の売り方というか、「再生のさせ方」もうまいな、と思った。
とてもかわいい表紙の絵。(ボブa.k.aえんちゃん)
最初にある人物相関図の絵。(ボブa.k.aえんちゃん)
帯に書かれた「冒頭の会議は退屈だけど80ページまで読んでみて!」の言葉。
これだけ、ユーザー目線で、サービス精神を持って工夫して、うまく「再生」してもらえると、自分のような「古い小説はちょっとなー」とか言っている人にも届く可能性が出る。
また、いま自分は「獅子文六さんの他の本も見てみようかな」と思っているくらいで、こういう読書範囲の拡大にも、一助になってくれそう。
「箱根史」と、
「恋愛」と、
読ませるための「再生術」。
なかなか、いろいろ考えさせてくれる小説だった。