脳の特徴とだまし方
一度、途中まで読んで、そのままになっていた本。
- 作者: 池谷裕二,糸井重里
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/06/01
- メディア: 文庫
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糸井重里さんと池谷裕二さんの「脳」についての対談。 池谷さんの、脳の性質、クセについてのお話にひきつけられながら読む。
脳は疲れない
そうなのか・・。
脳はいつでも元気いっぱい。全然疲れない。寝ている間も脳は動き続けて、夢をつくったり体温を調節したりしている。一生使い続けても疲れない。疲れるとしたら、目。
夢は無意識中の記憶の再構成
言われてみれば、確かに。予知夢とか、偶然だな。
夢は「記憶の再生」。フランス語をしゃべれないぼくが、フランス語をペラペラしゃべる夢を見ることは絶対にない。記憶がないから。
いろいろな組み合わせをしている。トライとエラーのくりかえし。夢にかぎらず、無意識では常にそんなことをやっている。
脳は刺激を求めるが頑固
指摘されると、思いあたること、ある。
脳には両極端の性質がある。理性を保つために新しい局面に適応するが、その反面、可塑性を拒否するような「自分に都合のいいように頑固に現実を解釈してしまう」ことも本能として備わっている。
脳は整合性をつけようとする。現実を、常に自分の都合のいいほうにねじまげて、自分が混乱しないようにものを見たがる。
海馬でわかる脳のズルさ
確かに、ウソがウソを勝手に膨らませて、自分でも制御できなくなるとき、ある、気がする。
記憶は海馬の中に蓄えられているわけではない。海馬は情報の要・不要を判断して、他の部位に記憶を蓄える。だから海馬を「記憶の製造工場」という。
海馬のない患者は、脳が整合性を保とうとしてウソをつくってしまう。だから不合理なことが起きたときに、自我を保とうとして、延々とつくり話をしてしまう。これは人間の本質。
子どもがつく意識的なウソと違って、知らないうちにウソを重ねるのが私たちのふだんの会話。脳の本質はウソつき。自分もだまされちゃっている。
自分の意識はほんの一部。無意識の世界のほうが大きくて、無意識というのがほとんどウソつきだから、私たちは本当に気づかない。気づけない。
失敗が飛躍のチャンス
これも思いあたる。ちゃんと失敗したほうがいい、ってこと、ありそう。
脳は消去法のように「ミスをした方向に進まないことで道を選ぶ」性質がある。間違えることは脳にとっては飛躍のチャンス。
失敗をくりかえさないと、あまり賢くならない。
脳は言葉によって自分を固定する
「自信を持てばなんでもできる!」「できないと言うからできなくなるんだ!」などの、威勢のいい話もあるけど・・。
言葉によって、自分をそこに固定したことになる。言葉ってすごく厄介なもの。
脳は安定化したい性質が強いので、自分があらかじめ言ったことに対しても、どんどん安定化していこうとする。
言語化することのいい面と悪い面ってすごくある。言語化することで何かが明確になる場合と、言語化することで固定観念がつくられてしまう場合と。
心とは、脳が活動している「状態」
「脳」と「心」の定義。勉強不足のため、知らなかった。
心とは脳のプロセス上の産物。心は脳が活動している「状態」を指す。「物体」ではない。脳を細分化しても心はどこにも見出せない。
車を部品に解体しても「スピード」がどこにも現れないのと同じこと。スピードは車の動きの「状態」のことだ。
やる気には「ならし運転」必要
「ほんのちょっと」から始めよう。
やる気を生み出す脳の場所がある。「側ざ核」。活動を始めるのは、ある程度の刺激が来たときだけ。
「作業興奮」という現象。掃除をやり始めるまでは面倒くさいのに、一度取りかかればはまってしまって、気づいたら部屋がすっかりきれいになっていたなどの経験は誰にでもある。行動を開始してしまえば、側ざ核がそれなりの行動をとってくれるから。
目標は刻んで設定せよ
脳の特徴、クセを考えつつ、自らもだますつもりで・・。
「目標は大きく」ではなく、「目標は小刻みに」と心掛けるほうがうまくいく。
心理学の言葉で「初頭効果」と「終末効果」。テスト時間内の最初と最後に能率が上がるように、あることのはじめと終わりには仕事がはかどる。たとえば一時間何かをやるにしても、三十分が二回あるんだと思うと、はじめと終わりが一回ずつ増えるから、よりはかどる。
信じることも重要。自分で自分をだまして、さらにそのうえで、その自分が心地よく動けるのは、とても大切。