謙虚で豪快な「怪力男たち」
大相撲の本が読みたくなり、まだ読んでいなかったこの本を買った。
- 作者: 下角陽子
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2017/07/31
- メディア: 文庫
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著者は国技館の実況キャスターの女性。
こういう感じの、面白がり、気配りの人なら、相撲界の男たちに気に入られるのだろうなと感じた。
そうなのかーと感じたのは、下記の点。
- 力士は洗髪に苦労する。瓶付け油は市販のシャンプーではなかなか落とせない強力な油分だから。(1回でボトルタイプ1本を使い切ることもある。毎日洗髪せず2、3日に1回)
香りがすごいから汗臭さもそんなに気にならないらしい。
国技館の力士用トイレは普通の便器の1.5倍の大きさの便器がすえられている。とても頑丈で、便器の排水管も太く、詰まりにくい設計にしてある。(相撲部屋のトイレもそうなっているところがある)
力士はせっかちさん。「相撲時間」という言葉があり、「30分前行動」、番付が下ならもっと早く行動しないと大目玉をくらう。(新弟子時代から「人を待たせてはいけない」と教えこまれているため)
確かに、土俵入りのだいぶ前から、花道に嬉しそうに集まっている関取たちがいる。そういう文化の人たちなんだと思った。
- 嘉風関はとても研究熱心。部屋が違う木村山関のアドバイザーになっていた。「対戦相手の足の出し方から角度など、『アイツは、こうやったら、こうくる』とか『こっちからイナしたら、アイツにはダメだ』とかよく教えてもらった(木村山)」
嘉風は相撲が好きな人なんだな、やっぱり。
魁皇関は金属のマドラーを輪にできる。10円玉も曲げられる。水道の蛇口を勢い余ってねじ切ってしまう。
力士は酔って歩いて、バス停を移動させてしまう。
「力士のぶつかり合いは、毎日、交通事故にあっているようなもの」と聞いたことがある。
そりゃ毎日、大きな木の柱にバンバン頭当てて、バンバンつっぱりを叩きまくっていたら、人間凶器にもなるよな。
ただ、どこかユーモラスな力士たちと、その力をまともには使わせない技も繰り出されるので、土俵がすごくシビアな場にも見えない感じもある。
時折、相撲の暴力性が露骨に見えてしまう取り組みもあって、ハッとさせられるけど。
- 多くの相撲部屋で稽古のあと全員で復唱する言葉がある。稽古場にもよく貼られている。
「はい」という素直な心
「すみません」という反省の心
「おかげさまで」という謙虚な心
「私がします」という奉仕の心
「ありがとう」という感謝の心
こういう言葉を大切にする男たちって、カッコいいなーと思った。