父親は老化しているだけか

80歳を超えた父親が何を考えているのか、家族で心配している。この本が気になって購入した。

老人の取扱説明書 (SB新書)

老人の取扱説明書 (SB新書)

本の内容は、まとめかた次第では「老化の正体・人はこのように老いる」というような感じにもできる内容だ。

ただ構成は「老人のこういう行為が気になるでしょう?」➡「その原因は老化によるこれです」➡「老人はこの行為をするとき、本当はこう望んでいます」➡「予防でこうやってあげて」まで書かれている。とても実践的で、わかりやすい。

自分は、今年の春、父親と焼き鳥屋さんに行ったとき、最初に出てきた大根おろしに、醤油をビッショビショにかける姿に衝撃を受けた。こんなこと、今までしてたっけ?と感じた。

本書によると、高齢者は塩味が11倍、苦味は7倍、うまみも5倍ないと、若い頃と同じには感じられないという。

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うーん、それなら、あんなにたくさん醤油をかけるのも、まあ・・仕方ないのかもなーと思った。

父親は、体はわりと元気なのに、外出をとても億劫がる。家族としては「せっかく元気なのにもったいない。歩かないから、ますます衰えるのではないか?」と気になってしまう。

これも「腰や膝の痛み・関節の変形は40歳台から始まり、80歳を超えると、膝は半数以上、腰は70%以上が関節の変形を認める」「筋力低下で歩くのが億劫になり、歩く速度も遅くなる。つまずきやすくなる」ときっちり説明されると・・まあ・・、そうだよなー、ある程度は億劫がるのも当然かー、という気持ちになる。

いや、よく考えれば、この本を読まなくても、うすうす、父親の変化は、老化による衰えだと思わなくもなかった。ただ、はっきりわからないと、なんとなく「いや、本人の性格の問題ではないか」「ちょっと怠慢なのではないか」みたいにも考えてしまいがちだ。

自分の家の場合は特に、80台後半や、90歳を過ぎても、若い頃と変わらずムチャクチャ元気で、明るくて、積極的で、いきいきしている人が、親戚や身近に何人もいたりする。そういう、超元気じいちゃん、超元気ばあちゃんは、話していて気持ちがいいし、自分もぜひああなりたいと思う対象だ。

すると、なおさら、積極性のない父親が気になってしまいがち。「老化は本人の心がけ次第なのでは?」みたいな独断、偏見にも陥りやすい。

父親は、人と話すときも積極的に話そうとしなくなっているから、それもあって最近、急に耳が遠くなってきたと思っていたが・・。

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そもそも60歳以上の段階で、若い女性のような高い声は男性の1.5倍大きくないと聞こえず、80歳を超えると難聴が7割8割を占めるという。

・・なんだ、これもやっぱり、老化しているだけか!

  • 80歳を超えると99%が白内障

  • 嗅覚も70歳台からの機能低下が大きい

  • 内臓機能も60歳以降どんどん衰える

まあ、老化ということで、父親の変化は、かなりの部分まで説明できてしまうと、改めて感じた。父親のほうが普通で、超元気老人のほうが例外という気にもなってくる。

日本は外国にくらべ補聴器が普及していないそうだ。日本は難聴者の13.5%しか使用していないが、イギリスは42.4%、アメリカは30.2%だという。補聴器はメガネと違って、慣れるのに時間がかかることが原因だという。

  • 補聴器は平均して5回6回は補正が必要。静かな部屋から慣らして、外で使うようにする。面倒でもこまめにメンテナンスをすべき。

・・とのことだ。まったく知らなかった。

父親は、意地悪してやろうとして頑固になっているわけでもなく、楽しようとしてサボッているわけでもない。

老化しているだけ。

そして自分も、日々、老化している。

当たり前と言えば当たり前だけど、とても大事なことを改めて教えてくれる、親切な一冊だった。